顧問契約を持つコンサルタントが法人化するときは、会社を作る手続きだけでなく、既存契約を個人名義のまま続けるのか、法人名義へ切り替えるのかを先に整理する必要があります。契約相手の社内規程、請求書の名義、源泉徴収の扱い、社会保険の加入関係が連動するため、登記日だけを決めても実務は動きません。この記事では、顧問契約型のコンサルタントが設立前に確認したい論点を、契約と運用の順番で説明します。
既存契約の名義を確認する
最初に見るべきなのは、現在の顧問契約が個人との契約なのか、法人への承継や再契約を予定できる内容なのかです。契約書に譲渡禁止、再委託制限、通知義務、秘密保持、競業避止などがある場合、法人化後もそのまま請求先だけ変える運用は避けます。
取引先によっては、新会社との契約締結に登記事項証明書、印鑑証明書、反社会的勢力排除条項、情報セキュリティチェック、取引口座登録が必要になります。設立日と契約切替日がずれる場合は、個人が受けた業務と法人が受けた業務を請求書や業務報告で分けておくと、売上計上の説明がしやすくなります。
事業目的と業務範囲を合わせる
定款の事業目的は、実際に提供する助言業務と今後広げる予定の業務を読み取れる表現にします。経営コンサルティング、人材育成、営業支援、IT導入支援、研修、資料作成など、契約書に現れる業務と大きくずれないことが大切です。
許認可が必要な業務に踏み込む場合は、名称だけで判断しません。たとえば有料職業紹介、行政手続書類の作成代理、金融商品に関する助言など、別の制度が関係する領域は所管窓口や専門家に確認してから目的や契約範囲を決めます。
報酬と源泉徴収を整理する
個人の業務委託報酬では源泉徴収が行われる場面がありますが、法人化後の支払では扱いが変わることがあります。取引先の経理部門に、契約名義、請求書様式、インボイス登録番号、振込口座、支払調書の扱いを事前に確認します。
個人時代の売上、法人設立後の売上、未収金、前受金が混在すると、確定申告と法人決算の両方で説明が必要になります。設立月をまたぐ顧問料は、どの期間の役務提供に対応するかを契約書、請求書、入金記録でそろえておくのが実務上安全です。
社会保険と役員報酬を設計する
法人化して代表者が役員報酬を受ける場合、健康保険・厚生年金の新規適用を検討します。個人事業の延長で資金を自由に引き出す感覚のままだと、役員報酬、立替経費、役員貸付金の区別が崩れやすくなります。
役員報酬は税務上の扱いも関係するため、金額と開始時期を税理士と確認します。顧問契約は月次収入が見込みやすい一方、解約リスクもあるため、社会保険料、法人住民税、会計費用、専門家費用を含めた固定費で資金繰りを見ます。
設立前に作る確認表
顧問契約型の法人化では、登記書類より先に契約移行表を作ると手戻りを減らせます。取引先ごとに、契約切替の可否、必要書類、請求開始月、個人売上との切り分け、秘密保持や再委託の制限を確認します。
| 確認項目 | 実務上の見るポイント |
|---|---|
| 契約名義 | 個人契約を終了するのか、新会社で再契約するのか |
| 請求実務 | 請求開始月、振込口座、インボイス登録番号 |
| 業務範囲 | 事業目的、契約書、実際の提供業務の整合 |
| 税務 | 個人売上、法人売上、源泉徴収、未収金 |
| 社会保険 | 役員報酬、新規適用、固定費の見込み |
